喉頭痙攣
声門閉鎖筋の攣縮のため反射的に声門開大障害をきたした状態をいい、換気困難から窒息状態となる。
日本救急医学会・医学用語解説集
喉頭の繊細な動きに関与する筋肉群が一斉に攣縮を起こす病態であるが、本来は誤嚥を防ぐための迷走神経を介する防御反射である。
唾液、血液、吐物、医療器具、喉頭付近の吸引操作、痛み刺激などいずれも誘引となり、上喉頭神経を介して発生する。
一度起これば声帯、仮声帯、披裂部は正中に固定してしまうため、病態生理学的には上気道完全閉塞の所見を呈する。
メカニズムとして2つの機序
1つ目は、麻酔の鎮静作用により過剰な反射を抑制するシステムが機能しないこと、
2つ目は、手術操作、抜管、気管内吸引などの上喉頭神経への過度の刺激が加えられることである。
発症する主なタイミングは、全身麻酔導入時、声門上器具を用いた麻酔維持期、抜管直後が報告されている。
喉頭痙攣のリスク因子
小児(特に6歳未満)
喫煙患者
気管支喘息患者
最近の上気道感染
ラリンジアルマスク
気管挿管
麻酔導入時、覚醒途中の不用意な吸引操作や喉頭鏡による刺激
手術操作(喉頭や声帯、咽頭に触る手術など)
症状が軽度で部分的な気道の開通がある場合は、強い吸気時の喘鳴が聞こえるので容易に気づく。
しかし、麻酔覚醒直後で、浅い鎮静が残っており、患者が苦しい素振りをみせることなく静かに完全な上気道閉塞に陥っていると、患者の無呼吸に気づかないことがある。
上気道閉塞の初期には、吸気努力に反して鎖骨上や頸部気管周囲が陥没する陥没呼吸が認められる。
上気道閉塞を放置すると低酸素血症が急速に進行し、結果的に心筋虚血や心筋梗塞、脳虚血や脳梗塞など重要臓器に致命的な損傷を与えかねない。
鑑別診断
舌根沈下による気道閉塞⇒声門上の閉塞。吸気時の喘鳴や奇異呼吸を生じる。喉頭展開し、声門部を観察すれば鑑別可能である。
気管支喘息⇒聴診で呼気時の喘鳴聴取。
麻薬による呼吸抑制⇒呼吸努力が認められない。
予防法
セボフルランと比較してデスフルランは気道刺激作用が強いため、緩徐導入など揮発性麻酔薬のみで全身麻酔の導入を行う際は、セボフルランが推奨される。
深麻酔下抜管⇒浅い麻酔状態での気道刺激を避けることができる。抜管時の激しい咳や術創からの出血を軽減できる。
加圧抜管⇒声帯筋群の閉鎖反射を抑制する。
対応
刺激となっている原因を取り除く
下顎拳上法による気道確保
口腔または経鼻エアウェイの挿入
100%酸素で緩やかに陽圧換気
筋弛緩薬(スキサメトニウムやロクロニウム)投与
麻酔を深くして(筋弛緩薬を追加し)再挿管
Laryngospasm notchを指で強く押す(これは最近はあまり論文が出なくなったように思います。)⇒自律神経反射を介して声帯の緊張を緩和する
まれだが怖い手術・麻酔合併症 症例検討 抜管後の低酸素血症
麻酔に伴う喉頭痙攣の予防とその治療
日本救急医学会・医学用語解説集
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